教授就任にあたって
椎名教授の『順天堂だより』2013年3月号(№268)用の原稿を転載させていただきます。
『教授就任にあたって』
大学院医学研究科画像診断治療学教授
医学部内科学教室・消化器内科学講座(消化器画像診断・治療研究室)(併任)
椎名 秀一朗
平成24 年12月1日付で大学院医学研究科画像診断学講座に着任致しました。小川秀興理事長、新井一医学部長、渡辺純夫消化器内科教授、川崎誠治肝胆膵外科教授を始め諸先生方に心から感謝致します。日本で最も長い歴史と伝統を誇り、創立175周年を迎える順天堂大学で肝胆膵疾患の診断と低侵襲治療を担当する責任をひしひしと感じています。
私は東京大学消化器内科で肝癌の低侵襲治療を中心に研究、診療にあたってきました。肝細胞癌では肝硬変や多発病変のため外科治療の適応となる症例は限られ、切除しても高率に再発します。根治的でありながら低侵襲で再発にも対応できる治療を研究し、エタノール注入療法から始まりラジオ波焼灼術に至りました。やがて他の大学病院などからも治療困難という理由で患者さんを紹介されるようになり、結果としてラジオ波の実施例は約8500例とおそらく世界最多になりました。それらの多数の臨床情報をデータベース化して解析を進め、ランダム化比較試験等の臨床研究も実践してきました。これらの経験を基にさらなる診療・研究のシステムを構築していきたいと考えています。
最近では大腸癌や胃癌の肝転移のラジオ波が増加しています。転移性肝癌でも10年以上の生存が何名も存在し、2000年3月に直腸癌肝転移にラジオ波を実施し今年96歳になった女性もいます。
教育については、良質の医療を提供し治療を望む多くの人々の診療を行なうことで、より良い臨床研修の機会を提供したいと思います。一緒に診療に従事してきた多くの後輩が今は日本の肝癌診療の第一線で活躍しています。愚直であっても「良い医療をし続ける姿を見せること」が最も重要と考えます。
なお、肝胆膵領域は、内視鏡や超音波ガイド下のインターベンションなど、技術的側面を強く持つ領域です。トレーニングプログラムを開設し、本学や関連施設のみならず他施設の医師にも広く門戸を開き、基本的手技から応用技術までをカリキュラムに沿って習得させるシステムを構築できればと考えます。他施設の医師をも指導することは、知識・技術の体系化につながり、他施設の経験や技術を知る機会も増え、当方のレベルアップにも寄与すると思われます。この分野の発展に本学がリーダーシップを取って貢献できればと考えています。
国内だけでなく海外からも治療を望む人々が集まるような医療を行ない、本学及び日本の消化器病学の評価を高めるよう頑張りたいと思います。ご指導、ご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。