肝臓がん生存率で全国トップでした(日経実力病院調査)
8月末から日経新聞に連載している「日経実力病院調査」で、順天堂医院が肝臓がんの生存率で全国で年100例以上の病院でトップでした。
日経新聞が、院内がん登録を基にした2012-13年に診断を受けた患者の治療成績を調査・分析したところ、順天堂で治療を受けた患者の5年生存率が最も高かったということです。
このため、12月17日に、この結果に対する評価と、現在を含めた順天堂医院における肝臓がん治療の現状と特徴についての取材があり、12月28日の日経新聞朝刊に記事が掲載されました。
国立がん研究センターによると、がん拠点病院などで2012~13年に診断・治療を受けた患者の5年生存率は初期の1期が54.4%。2期は39.4%、3期は13.5%、最も進行した4期では3.9%に低下します。今回の調査では1~4期の進行度の違いを調整し、全患者の治療成績について全国平均を100とする「生存率係数」で比較しています。
病院別の生存率を公表している約400のがん拠点病院などのうち、12~13年に200人以上の患者を診断・治療したのは17病院のみ。このうち生存率係数が最も高かったのは128.0の順天堂大学順天堂医院(東京・文京)でした。
順天堂医院の5年生存率は1期が67.0%、2期が54.1%でいずれも全国平均より10ポイント以上高い成績でした。
当院では、ラジオ波焼灼(しょうしゃく)術を多くの患者に行っていることに特徴があります。ラジオ波焼灼術とは直径1.5ミリの細長い電極針を体表から肝臓のがんに刺し高周波を使ってがんを焼き切る治療法です。椎名秀一朗教授が1999年に東京大学で導入、今回の調査期間となる12年からは順天堂医院で実施しています。椎名教授は「ラジオ波焼灼術は根治性のある治療でありながら体に対する負担も少ない。高齢者や肝硬変の進んだ患者でも治療可能であり、再発しても繰り返し治療ができる。そして、順天堂は技術や経験、設備やスタッフも優れている。肝がんは再発率が高いが、治療後のフォローアップ体制も確立している。このため生存率が良いのだろう」 と言っています。当院では最近ではより大きな範囲を安定して焼灼できる新世代マイクロ波焼灼術も導入しています。
ラジオ波焼灼術は04年に保険適応となりました。その後、全国の主な49病院でそれまで標準治療とされた外科手術とラジオ波焼灼術との比較試験が行われました(SURF trial)。その結果が今年に発表され、外科手術とラジオ波焼灼術とで5年生存率に差が認められませんでした。予想では再発率は周りの肝臓組織まで含めて大きく取り除く外科手術のほうが有利と考えられましたが、再発でも外科手術の優位性は認められませんでした。
以前は日本肝臓学会のガイドラインではがんの個数と大きさが「3個・3センチ以内」ならば切除と焼灼が選択肢で、がんが1個ならば切除が第一選択でした。しかし、本年10月に発表された新ガイドラインではこの比較試験の結果を受けて、切除と焼灼は全く同等の扱いとなりました。
当院では他の医療機関で治療が困難とされて紹介されてくる患者が多いのですが、大部分の患者ではラジオ波やマイクロ波で治療が可能です。ラジオ波焼灼術は約1400施設で実施されていますが 、技術や治療成績は外科手術以上に施設間格差が大きいとされています。椎名教授は研修会や学会を通じて、技術を標準化し広く伝える取り組みにも力を入れています。
記事内で「ラジオ波で肝がんを焼灼する技術の研修会=順天堂大学の椎名秀一朗教授提供」として取り上げられたラジオ波治療トレーニングプログラムの写真