筑波学園病院で出張アブレーションを実施しました
筑波学園病院で、副病院長の福田 邦明 先生のご厚意により出張アブレーションを実施しました。
治療を行った症例は、これまでに数回アブレーションを受けてきた患者さんでしたが、今回は心臓直下という治療困難部位に病変が存在しました。安定した技術がなければ重篤な合併症を引き起こしかねない症例でした。さらに、病変の辺縁部は hypervascular である一方、中央部は hypovascular という所見を示していました。他院では「肝細胞がんの再発ではなく、転移性肝がんの可能性も否定できない」とされ、原発巣の検索も行われましたが、原発巣は見つからず、転移性肝がんの可能性は低いと判断されました。低分化の肝細胞がん、あるいは肝内胆管がん、もしくは肝細胞がんと肝内胆管がんの混合型の可能性も考えられました。このため、safety margin を大きく確保して治療を行うべき症例でした。
心臓直下の病変の場合、アップライトポジションにしたほうが病変の描出が容易になります。私たちは東京大学や順天堂大学では、アップライトポジションが可能な専用の治療台を使用していました(写真参照)。しかし、そのような専用の治療台を備えている病院は、ほとんどないのが実情です。今回の患者さんは肥満体型ではなかったため、簡易型の治療台でも治療が可能でしたが、この点について福田先生から「透視台を使えばよいのではないか」とのお話があり、大変有用なアドバイスと感じました。今後、専用の治療台がない病院でアップライトポジションが必要な症例に対しては、透視台の使用も検討していきたいと思います。
また、術者用のモニターとは別に、タブレット型のモニターを超音波操作者用にご準備いただけたのも大変助かりました。東大時代から、モニターは術者用と超音波操作者用の2台を使用していましたが、他の施設で治療を行う際には、モニターが1台しか用意されていないこともあり、そのため操作のタイミングがうまく合わず、治療が円滑に進まないことがありました。
今後、7月に台湾、8月にモンゴル、9月にインドネシア、来年1月にフィリピンで、ライブデモンストレーションの治療を行ないますが、タブレット型モニターであれば、海外でも準備が可能ではないかと思われます。
なお、もう1例治療を予定していましたが、体調不良のため治療がキャンセルとなり、大変残念でした。
筑波学園病院での治療経験は、今後アブレーションを実施していく上でも、大変有意義なものとなりました。インターネットで見る病院の外観はごく普通の病院のように見えましたが、実際には印象が大きく異なりました。病院内部は本当に美しく、1階のエントランス部分だけでなく、医局や病棟も広々として整然としており、大変気持ちの良い環境でした。スタッフや秘書さんも大変親切でした。同行したモンゴルからの留学生のKhishigee先生は「大変良い経験だった」と話していました。
このような出張でのアブレーションは、アブレーション技術の普及にも大いに役立つと思われるため、機会があれば積極的に実施していきたいと考えています。
椎名 秀一朗