2014年研究室報告
順天堂大学消化器内科同窓会「済衆会」用の原稿を転載させていただきます。
画像診断・治療研究室は肝胆膵疾患の診断と低侵襲治療を担当しています。現在、椎名秀一朗、崔仁煥、丸木実子、石井重登、金澤亮、三浦(旧姓小森)寛子、谷木信仁、清水遼が在籍しています。本年4月に金澤亮が順天堂大学浦安病院から戻り、4月に清水遼が和歌山医科大学から、6月に谷木信仁が慶応大学から加わりました。また、石井重登が飯田市立病院に出向しています。
胆膵領域の検査や治療に関しては、これまで通り、内視鏡や超音波を使用したinterventionを積極的に実施しており、日常の診療に加えて、緊急症例にも遅滞なく対応しています。昨年度はERCPを409件、ESTを124件、ステントを194件、ENBD を93件、PTCD等を177件、超音波内視鏡を494件、FNAを63件、MRCPを996件実施しました。本年3月には新B棟2階に引越し設備も新しくなりました。胆膵の悪性疾患の症例数は全国でも上位に位置するため、多施設共同臨床研究や臨床治験などにも積極的に参加し、肝胆膵外科とも連携して診療を進めていきます。
血管造影は当研究室の特色の一つですが、現在、放射線科とも連携して昨年度は計229件の血管造影(すべてTAEないしTAI)を実施しています。門脈腫瘍栓を伴うなどの高度進行肝癌症例に対するDSM-TACEなどに特色があります。肝癌症例の増加に伴い、肝動脈塞栓術や肝動注化学療法などのinterventionを伴う血管造影がさらに増加するものと予想されます。
また、体外式超音波は5521件、CTは5135件を実施しています。
肝癌に対するラジオ波焼灼術(RFA)ですが、これまでの5~10倍の月40件ペースで実施しており、2013年の実績は日本で一番になったと考えられます。多くの大学病院やがんセンターなどからも治療困難という理由で患者さんを紹介されており、全国各地からだけでなく海外からも治療を求める患者が来院しています。また、今年5月にはイタリアからGiovanni Galati先生がvisiting staffとしてラジオ波治療の研修に来日しました。続いて台湾のJui-Hsiang CHUNG先生も短期研修に訪れました。なお、今年はコンピュータに強いスタッフが加わりましたので、精密なデータベースの構築や肝図システムの導入を実施したいと思います。最近では大腸癌や胃癌の肝転移のラジオ波が増加しています。転移性肝癌でも10年以上の生存が何名も存在し、2000年3月にラジオ波を実施した直腸癌肝転移の女性は、14年以上生存中で、現在97歳になっています。肝外病変に対してもRFAを実施するため、「肝細胞癌その他の悪性腫瘍の肝外病変に対するラジオ波治療の有効性と安全性に関する研究」の自主臨床試験実施計画を病院倫理委員会に提出し承認されています。
肝胆膵領域は、内視鏡や超音波を使用したinterventionなど、技術的側面を強く持つ領域です。トレーニングプログラムを開設し、本学や関連施設のみならず他施設の医師にも広く門戸を開き、基本的手技から応用技術までをカリキュラムに沿って習得させるシステムを構築できればと考えます。他施設の医師をも指導することは、知識・技術の体系化につながり、他施設の経験や技術を知る機会も増え、当方のレベルアップにも寄与すると思われます。昨年、全国各地から希望者を募り、ラジオ波焼灼術トレーニングプログラムを実施し好評でした。RFA室が新病棟に移り、広くなり、新しくなったため、今年は8月22日、23日を皮切りに、2~3ヶ月毎に全国から参加者を募集し、トレーニングプログラムを実施する予定です。肝胆膵領域のinterventionの発展に本学がリーダーシップを取って貢献できればと考えています。
研究に関しては、環境を整備中ですが、昨年の教室員の業績は、英文論文が8本、国際学会発表が7回でした。
国内だけでなく海外からも治療を望む人々が集まるような医療を行ない、本学及び日本の消化器病学の評価を高めるよう頑張りたいと思います。ご指導、ご支援をよろしくお願い致します。 (椎名秀一朗)