2015年研究室報告
順天堂大学消化器内科同窓会「済衆会」用の原稿を転載させていただきます。
画像診断・治療研究室
画像診断・治療研究室は肝胆膵疾患の診断と非外科的低侵襲治療を担当しています。現在、椎名秀一朗、崔仁煥、畑中健、石井重登、佐藤公紀、金澤亮、三浦(旧姓小森)寛子、林学、清水遼が在籍しています。本年4月に石井重登が飯田市立病院から戻り、畑中健が伊勢崎市民病院から、佐藤公紀が三井記念病院から、林学が福島県立医科大学から加わりました。谷木信仁は慶応大学の大学院生であるため、学位取得のために戻りましたが、非常勤として医局の臨床リサーチカンファなどに参加しています。
胆膵領域
胆膵領域の検査や治療に関しては、これまで通り、内視鏡や超音波を使用したinterventionを積極的に実施しており、日常の診療に加えて、緊急症例にも遅滞なく対応しています。昨年度はERCPを466件、ESTを136件、ステントを225件、ENBD を85件、PTCD等を252件、超音波内視鏡を376件、FNAを79件実施しました。また、体外式超音波は5,686件実施しています。胆膵の悪性疾患の症例数は全国でも上位に位置するため、多施設共同臨床研究や臨床治験などにも積極的に参加し、肝胆膵外科とも連携して診療を進めています。
血管造影
血管造影は当研究室の特色の一つですが、現在、放射線科とも連携して昨年度は計110件の血管造影(すべてTAEないしTAI)を実施しました。肝癌症例の増加に伴い、肝動脈塞栓術や肝動注化学療法などのinterventionを伴う血管造影がさらに増加するものと予想されます。
肝癌に対するラジオ波治療(RFA)
肝癌に対するラジオ波治療(RFA)は、2013年の実績は481例となり日本でトップとなりました。ちなみに、第2位は東京大学、第3位はNTT東日本関東病院ですが、これらの施設ではかつてはラジオ波治療を確立するため私と一緒に働いた医師がラジオ波治療を担当しています。当科には多くの大学病院やがんセンターなどから治療困難という理由で患者さんを紹介されており、全国各地からだけでなく海外からも治療を求める患者が来院しています。なお、昨年はコンピュータに強いスタッフが加わり、データベースを構築しましたが、今年は肝図システムを導入したいと企画しています。最近では大腸癌や胃癌の肝転移のラジオ波治療が増加しています。転移性肝癌でも10年以上の生存が何名も存在し、2000年3月にラジオ波治療を実施した直腸癌肝転移の女性は、15年以上生存中で、現在98歳になっています。肝外病変に対してもラジオ波治療を実施するため、「肝細胞癌その他の悪性腫瘍の肝外病変に対するラジオ波治療の有効性と安全性に関する研究」の自主臨床試験実施計画を病院倫理委員会に提出し承認されています。
ラジオ波治療トレーニングプログラム
肝胆膵領域は、内視鏡や超音波を使用したinterventionなど、技術的側面を強く持つ領域です。その技術の水準を全国的に高めていくために本学や関連施設のみならず他施設の医師にも広く門戸を開き、基本的手技から応用技術までをカリキュラムに沿って習得させるシステムを構築できればと考えておりました。そこでラジオ波治療のトレーニングプログラムを企画し、2013年6月、2014年8月、10月、2015年2月、6月と現在までに計5回実施しました。毎回全国各地から応募があり、受講後のアンケート調査では、「とても充実したプログラムで勉強になった」、「この貴重な経験を活かして実臨床に役立てたい」、など手応えのある回答が得られています。肝胆膵領域のinterventionの発展に本学がリーダーシップを取って貢献できればと考えています。
研究に関して
研究に関しては、臨床リサーチカンファランスや抄読会を定期的に実施するようになりました。豊富な症例を活かして、臨床研究を各々のメンバーが行うようになり、学会発表や論文作成もできる環境になってきています。昨年の教室員の業績は、英語論文が10本、国際学会発表が14回でした。
優れた医療の提供
優れた医療を提供することによって、多くの患者を集め、活気ある医療現場を生み出し、さらに優れた診療体系を確立する、というプラスの連鎖を生み出していきたいと思います。本学の消化器病学の評価を高めるよう頑張りたいと思います。ご指導、ご支援をよろしくお願い致します。 (椎名秀一朗)